職業安定法に抵触しない!リファラル採用の報酬設計と失敗を防ぐ戦略ガイド

リファラル採用を進めようとすると、必ずと言っていいほど採用担当者が抱える疑問があります。
- 「社員に報酬を支払うのは違法ではないのか?」
結論から言うと、報酬設計を誤ると職業安定法に抵触し“違法”になり得ます。
特に誤解されやすいポイントが「社員にお金を払うと紹介業になるのでは?」という論点です。
本記事では、この“違法になるケース”と“適法に運用するための設計ポイント”を専門的かつ実務的観点から徹底解説します。
さらに、企業が陥りがちなリファラル採用の落とし穴や、制度を導入してもうまく定着しない理由、そして最終的にリファラル採用を「採用活動全体の戦略の一部として確実に機能させる方法」までを網羅します。
目次
採用担当者が知るべき「リファラル採用の報酬と違法性」
リファラル採用は「低コスト・高精度で優秀人材を採用できる」として注目されましたが、一歩間違えると職業安定法に抵触するリスクを抱えています。
ここでは、まず最も誤解の多い“報酬の違法性”を明確に整理します。
リファラル採用の「報酬」が職業安定法に抵触する可能性
リファラル採用の報酬は、条件によって職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)に抵触する可能性があります。
職業安定法44条では、
「対価を得て労働者をあっせんする行為を禁止」
と定めています。
つまり、もし企業が社員へ支払う報酬が“人材のあっせん(紹介)の対価”と判断されると、社員が“有償の紹介者”になったとみなされ、法律違反になります。
▼違法と判断される主なパターン
- 採用決定のタイミングで報酬を支払う
- “紹介成功の対価” と明記している
- 社員に「紹介人数のノルマ」を課している
- 紹介業務を社員のKPIに設定している
これらは、法律上「社員が紹介業をしている」と解釈される恐れがあります。
採用担当者として押さえるべきポイントは、
“紹介(あっせん)そのものに対価を支払ってはならない”
という点です。
適法とするための「報酬設計」の条件とポイント
違法にならないためには、報酬を“紹介の成功に対する対価”ではなく、あくまで“協力への謝礼”として扱う必要があります。
以下のような設計が適法運用のポイントです。
▼① 支払いタイミングを変える(採用決定時ではなく)
適法性が高い例:
- 紹介があった時点で支払う(選考結果に関係なく)
- 入社後◯ヶ月定着したら支払う(紹介の対価ではなく、定着協力への謝礼)
- 紹介活動への参加を福利厚生として扱う
※「採用成立の瞬間」に支払うと違法リスクが跳ね上がります。
▼② 報酬を“福利厚生・社内制度の一環”として位置づける
制度上、「社員紹介制度」「インセンティブ制度」「社内ポイント制度」として扱うことが望ましいです。
- 社内ポイントとして付与
- 食事券・ギフト券として支給
- 福利厚生プログラム内での報酬
- 社員の行動促進施策の一環として設計
このように“採用の成功に対する対価”に見えないように設計することが重要です。
▼③ 金額が過度でないこと(社会通念上の範囲)
極端な高額報酬は「対価性」が疑われ、違法性が高まります。
高額の成功報酬を避け、適正額の“謝礼”として設計しましょう。
リファラル採用における報酬の適正な相場と種類
企業規模や業界により差はありますが、一般的な報酬相場は以下が実務ラインです。
▼金銭報酬(相場)
- 非エンジニア:3万円〜10万円
- エンジニア:10万円〜30万円
- リーダー・マネージャー層:10万円〜50万円
ただし、金額が高すぎると「対価性」を疑われるリスクがあるため注意が必要です。
▼金銭以外の報酬例
| 種類 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ギフト券・食事券 | 手軽・違法性リスク小 | 動機付けが弱い場合も |
| 社内ポイント | 福利厚生として扱いやすい | 即時性が弱い |
| 社内表彰 | モチベーション向上 | 実利性が少ない |
| 旅行券・体験ギフト | ポジティブ体験を提供 | 金額と対価性の線引きが必要 |
| インセンティブ制度に組み込み | 全社施策として自然 | 制度としての複雑化 |
金銭だけではなく、多様な形で“協力への感謝” を表す制度にすることで適法性が高まります。
意外とうまくいかない!リファラル採用の「落とし穴」と失敗事例
「リファラル採用=低コストで優秀人材が採れる」という誤解は根強くあります。
しかし現実には多くの企業が失敗し、制度が形骸化していきます。
ここでは、その“落とし穴”を明確にし、典型的な失敗事例を紹介します。
「万能薬」ではないリファラル採用の現実
リファラル採用は万能ではありません。
特に以下のケースでは効果が限定的です。
- そもそも社員数が少ない
- 社員の交友関係が限られている
- 新規事業や専門職など、社内に紹介可能な知人がいない
- 企業が認知されていない業界だと紹介ハードルが高い
また、社員が採用ターゲットを正しく理解していなければ、紹介の質は安定しません。
“紹介制度を作っただけで採用が加速する”
という期待は危険で、失敗を招きます。
「とりあえず進めてみた」で陥る具体的な失敗パターン
失敗1:制度の目的が曖昧で社員に浸透しない
「制度を作ってメールしただけ」では誰も動きません。
失敗2:紹介フローが複雑で面倒
フォーム入力が多すぎる・確認ステップが多いなど、社員の負荷が高い制度は続きません。
失敗3:不採用時のフォローが雑で社員が気まずくなる
友人・知人を落とした際のフォロー体制がないと、紹介者は動かなくなります。
失敗4:報酬設計が違法ギリギリで制度停止になる
法律面を考慮せず運用すると、管理部門からSTOPがかかることも珍しくありません。
これらの問題は「制度」ではなく「文化の定着」に目を向ける必要があるということを示しています。
リファラル採用を成功させるための「仕組み作り」の重要性
成功する企業に共通するのは、リファラル制度を “文化” として根付かせている ことです。
制度を機能させるためのポイントは以下のとおりです。
- カジュアル面談を推奨し、紹介ハードルを下げる
- 紹介フローを最小限にシンプル化
- 社員が推薦しやすい候補者像を定義し共有する
- 不採用時の丁寧なフォロー体制を整える
- 入社後のオンボーディングも強化し紹介者の不安を減らす
リファラル採用は「制度を導入したら終わり」ではなく、継続的な運用改善が不可欠です。
採用成功への近道:採用戦略のプロ「採用代行(RPO)」を活用する
リファラル採用はあくまで採用手法の一つに過ぎません。
リファラルがうまくいかない背景には、制度そのものではなく「採用戦略の欠如」が存在します。
リファラル採用は「数ある採用手法の一つ」に過ぎない
採用で成果を出すためには、以下を総合的に設計する必要があります。
- 人材要件定義
- 採用市場の分析
- リファラル・ダイレクトリクルーティング・求人媒体・人材紹介の最適バランス
- 各手法のKPI設計
- 母集団形成チャネルの組み合わせ
リファラル採用だけでは、採用全体の課題は解決できません。
採用課題を俯瞰し、リファラルを含む最適な戦略を設計する
採用がうまくいかない企業の多くは、
- 違法リスク
- 制度が定着しない
- 母集団形成が安定しない
などの“個別の課題”に捉われていますが、本質は 採用戦略の欠如 にあります。
採用代行(RPO)は、企業の採用状況をヒアリングしたうえで、
- 適法なリファラル制度設計
- ダイレクトリクルーティング運用
- 採用広報支援
- 面談設定・歩留改善
- 採用全体のプロジェクト化
など、採用成功に必要な戦略と実務を一貫して支援できます。
キャスターの採用代行サービスが提供する価値
CASTER BIZ recruiting(株式会社キャスター)は、
豊富な採用支援実績と専門性を備えたRPOとして、豊富な採用支援実績と専門性を基に、リファラル採用の制度設計や運用を成功させるためのポイントをアドバイスいたします。
▼キャスターが提供できる価値
- 法的リスクに配慮した制度設計
- 採用戦略全体を俯瞰した上でのチャネル最適化
- スカウト・媒体運用・採用広報の一気通貫支援
- 面談設定や歩留まり改善まで伴走
- 経営層と採用担当者間の情報整理・意思決定の支援
リファラル採用を“文化として根付かせる”ための仕組みづくりを現場レベルでサポートできます。
まとめ
リファラル採用は強力な採用手法ですが、報酬設計を誤ると職業安定法に抵触し違法となる可能性があります。
また、制度だけ整えても“文化として定着させる仕組み”がなければうまくいきません。
採用成功の鍵は、
リファラルを含む採用手法全体を戦略的に組み立てること
にあります。
リファラルの適法設計から採用戦略の構築まで、専門家の伴走が必要であれば、ぜひご相談ください。



